2026/07/06
その山、誰の名義ですか——祖父名義のままの相続山林と、2027年3月に迫る相続登記の期限
「親の山を相続したので、売れるかどうか見てほしい」——そうしたご相談で登記情報を取り寄せると、所有者欄が亡くなったお父様ではなく、その先代、つまりご相談者から見て祖父の名前のまま、ということが珍しくありません。
場所を突き止める前に、まず「誰の山なのか」が確定していない。相続山林の現状把握では、実はこちらの方が先に立ちはだかる壁になることがあります。今回はこの名義の問題と、2024年に始まった相続登記の義務化についてお伝えします。
なぜ山林は祖父名義のまま残りやすいのか?
山林は評価額が低く、登記を移す費用と手間に見合わないと判断され、名義変更されないまま世代を越えやすいからです。
山林は宅地と違い、日常の暮らしの中で所有者名義が問われる場面がほとんどありません。固定資産税も一筆あたり数百円〜数千円ということが多く、「そのままでも困らない」まま数十年が経過します。
その結果、お父様が亡くなって初めて登記を確認したら祖父名義だった、さらに調べたら曽祖父名義だった——という数次相続の状態が生まれます。相続が二代、三代と重なると、法定相続人は枝分かれして十数人に及ぶこともあり、全員の同意を取り付ける遺産分割協議の難度が一段ずつ上がっていきます。
相続登記の義務化で何が変わったのか?
2024年4月1日から相続登記は義務になり、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に登記を申請しなければ、10万円以下の過料の対象になり得ます。
重要なのは、施行日より前に発生した相続も対象だという点です。過去の相続については施行日から3年、つまり2027年3月31日が申請期限の目安になります。祖父の代から名義が動いていない山林も、この義務の外にはありません。
なお、この義務は山林に限らず、実家の建物や宅地、農地もすべて対象です。建物付きの不動産を含めた売却の全体像は、売却総合サイトの大相続時代シリーズで扱っています。
遺産分割協議がすぐにまとまらないときは?
相続人申告登記という簡易な手続きを使えば、協議がまとまる前でも、ひとまず登記申請の義務を果たしたことになります。
自分がその不動産の相続人の一人であることを法務局に申し出るだけの制度で、遺産分割協議の完了を待つ必要がありません。相続人が十数人に枝分かれした数次相続の山林でも、まず自分の分の申出をしておけば、期限に対応した上で、名義の最終的な整理は落ち着いて進められます。
「急いで全部を解決しなければならない」と読む必要はない、ということです。
※過料の運用や手続の細部は個別事情で変わります。正確なところは法務局または司法書士にご確認ください。
名義の整理は、どの順番で進めればよいか?
「登記情報で現状を確認する → 相続人の範囲を洗い出す → 期限内は相続人申告登記でつなぐ → 遺産分割協議で最終の名義を決める」の順番です。
- 登記情報の取得——地番が分かれば法務局で誰でも取れます。所有者が誰の代で止まっているかをまず確認します
- 相続人の洗い出し——戸籍をさかのぼり、法定相続人の全体像をつかみます。数次相続では、ここが最も時間のかかる工程です
- 相続人申告登記——協議に時間がかかりそうなら、先にこれで期限に対応します
- 遺産分割協議と相続登記——山林を誰が引き継ぐかを決め、名義を現在に揃えます
売却も、自社買取も、国庫帰属制度の利用も、名義が現在の相続人に揃っていることが出発点です。並行して、どの山を引き継ぎ、どの山を手放すかの仕分け(ABC三分類)を進めておくと、協議の場での判断材料になります。
朝倉の所見
年間300件を超える査定相談をお受けしていますが、八ヶ岳西麓の山林で「名義が先代のまま」というケースは定型と言っていい頻度で出てきます。理由は単純で、この地域の山は暮らしの中で「使われて」きた一方、「取引されて」こなかったからです。薪を採り、茸を採り、区や財産区の中で維持されてきた山は、名義を動かす機会そのものがなかった。宅地なら売る・貸す・建て替えるという節目で必ず登記が動きますが、山にはその節目が来なかっただけのことです。
だからこそ、名義が古いままであることは、恥ずかしいことでも珍しいことでもありません。ご相談の入口は「地番の分かる納税通知書」だけで十分です。名義の整理そのものには司法書士など専門家の力が必要な場面がありますが、その手前の「この山は整理して手放す価値があるのか、持ち続ける前提で名義だけ揃えるのか」という見立ては、私どもが現地と登記の両方を見てお手伝いできます。そして整理が済んだ段階で「やはり手放したい」となった山は、他社で値段がつかないと言われたものでも、自社買取の目線で拝見できます。整理の順番を一緒に組み立てるところから、ご相談ください。


